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特別講演会「江戸噺 江戸庶民の庭―庭園史に書かれなかった、江戸の下級武士・町人の庭を探る」

 
特別講演会「江戸噺 江戸庶民の庭―庭園史に書かれなかった、江戸の下級武士・町人の庭を探る」
深川・清澄庭園大正記念館にて開催 10月29日
 
 
 (一社)日本エクステリア学会(吉田克己代表理事)は10月29日の17時30分より特別講演会「江戸噺 江戸庶民の庭―庭園史に書かれなかった、江戸の下級武士・町人の庭を探る」を深川・清澄庭園大正記念館にて開催した。会員、一般参加者、学生など約30名が聴講に訪れた。
 
 
 
 最初に本学会・歴史委員会の須長一繁委員長が挨拶に立ち「歴史委員会では『江戸時代の庶民の生活の庭、町家の中のエクステリア』をテーマとして調査活動を行ってきました。このたび、そうした活動の一環として、江戸時代の専門家であり、TV等の時代劇の時代考証を手掛け、また一般の人向けに江戸時代をテーマとした多くの著作を出されている山田順子先生にお話を伺うことになりました」と述べた後、時代考証家・山田順子講師の紹介を行った。
 
山田順子先生
 
 講演で山田講師は、自身が時代考証を手掛けた江戸時代を舞台とした数々の有名テレビドラマ作品の建築と庭の設定、そして舞台裏などの秘話を披露した。中でもロケ地として活用されている「ワープステーション江戸」(茨城県つくばみらい市)の紹介をしながら、吉原遊郭のランドスケープや商家のファサードや中庭、植栽の存在価値などについて解説。また監修に携わった歴史作品で、監修前には店看板の配置や動線などが江戸時代と明治時代とで混同していた事例なども、面白おかしく紹介した。
 講演終了後は山田講師を交えたパネルディスカッションが行われ、須長委員長をモデレーターを務め、歴史委員会のメンバーである大嶋陽子氏、山澤清一郎氏、蒲田哲郎氏がそれぞれの専門分野の立場から意見を述べて、テーマの深堀が行われた。
 
パネルディスカッション
 
 
 今回のイベントについて参加者からは「大変興味深い話だった」「現代の住まいにも取り入れるヒントがあるような気がする」「もっと長く話を聞きたい」「もっと多くの人に聞かせるべき内容だった」といった高評価が寄せられた。これを受けて歴史委員会では「今後は他団体への声掛けや、業界外へも情報発信をしていく必要」としている。今回の試みは、エクステリア業界だけでなく、建物の外まわりに関する学術研究の必要性を強く感じさせるものであったと言える。
 
山田先生を囲んでの記念撮影