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2019年6月10日 歴史委員会6月度定例会議事録

2019年6月度定例会議事録
日時:令和元年6月10日(月) 16:30~ 
場所:場所:建築資料研究社様 会議室D
住所:東京都豊島区池袋2-50-1
議題:「江戸時代の庶民の生活の中に庭、町屋の中のエクステリア」について
参加者:犬塚、蒲田、中澤
 
1.これまで裏長屋などのエクステリアを文献で調べてきたが、事例が出てこない。そこで次の事例をから江戸図屏風(1)などに描かれた、表店のエクステリア(2)など中流階層以上をこれらを調べてみました。
 
(1)江戸図屏風の拡大図(右隻6扇中下:神田筋違橋北岸)
江戸時代初期の神田のにぎわいがあわしてある。町家は板ぶきで、うだつをあげているものが何軒もある。どの家も棟には雁ぶり瓦をのせておさえている。これは関東の農家にもよくみうけられる。屋根のふき板は長板とみられるもの、こけらとみられるものがあり、また町のうらには草屋もある。間取りは通り庭を持つ形式で、京都の町家と同様である。江戸の町家は前面通り全体をミセとするのがのちには一般的になる形式であるから、この屏風が描かれたのちにそのような転換があったことがわかる。』
日本の美術No.167表紙裏図版解説より
 
景観年代が寛永十年(一六三三年末~十一年初頭と考えられる『江戸図屏風』(国立歴史民俗博物館所蔵)
 
*拡大図により植栽関係が良くわかった。表店の背後の空閑地に植えられれていたか?(中澤)
 
 
 
(2)江戸の町家(日本人のすまい:稲葉和也・中山繁信著 彰国社 昭和58年
 この部分の参考文献は、
・田村栄太郎:江戸時代町人の生活 雄山閣 昭和55年(とくに文章は多くの記述が似ている)
・宮沢さとし:町家と町並み(日本の美術167)至文堂 昭和56年(この本に江戸の町家は一例もなく参考のみか?)
 
 
江戸の町は、参勤交代の制度の為に、他藩から商人や職人も大勢移り住んできたため、他の城下町とは比較できないほど多くの職種を持った町人たちで成り立っていた。特に江戸時代初期には、京阪やいせ、近江など上方の商人たちは、江戸に出店(江戸店)を開いて、さまざまな地方の物産(下り物)を扱い、巨額の富を築いて、幕府御用達、札差などの利権を得た。町の大通りに面してつくられた表店は、京阪の商家より立派な店構えで、店員である番頭から手代、丁稚に至るまで本店から連れてこられ、江戸には妻子も置かせなかった。そのため、江戸の町人であると多いう意識も希薄で、京阪のような町家としての統一性に欠けていた。表店は瓦葺でも、裏店は板葺や茅葺も多く、明暦の大火(1657年)以後も度重なる大火によって江戸のまちは焼失した。しかし広小路や火除け地を設けたり、市街を拡張するにつれて江戸っ子意識も芽生え、民間の消防組織である町火消など、町の治安も整備するようになった。町の入口の木戸には定刻(夜10時)になると閉められたが、以後はそのわきの潜りから通してくれるのが番人の仕事であった。自身番は町人である家主たちが、町奉行のもとで町政を行う出先機関でもあったが、警察署や消防署を兼ねた役割もしていた。(以上P66本文より)
 
 
表店の住まい(同上P67より)
 
表店のすまい(同上P67説明文)
 表店の町家は、たいてい商家で、敷地は間口が狭く奥行きが深い。主屋の店は間口いっぱいに建て、その背後に、土蔵や納屋、便所や風呂場などを建てる。間口の広い大店の場合は、主屋の脇から塀を出して門を設け、その奥に玄関や客座敷をつくる場合も見られる。商家の典型的な間取りは、表通りから裏に通り抜けることができることができる「通りにわ」を片側にとって、部屋を1列か2列並べるもので、この形式は京阪地方に多くみられる。表の入口を入ると表庭に接して店があり、その奥が居室部と接客部になっている。大店の家では接客の座敷に裏庭を設けて茶室など数寄をこらして客をもてなした。江戸の表店は、店の間口全体を土間とし、その奥に張り床部を設けて帳場のみせとし、店全体を開放するのが普通であった。この場合、客は土間に入り、店の上り口に腰かけて品定めをした。町家がだんだん過密になりにつれ、みせの間口を広くとれなくなると2階屋が発達した。古くは、厨子二階と呼ばれ、店の表の屋根裏を利用して使用人などを住まわせていたが、しだいに本2階建てとし、2階座敷を接客にも利用した。この2階の表側は、土蔵造りとして「窓」を開くものや。出格子をつける物、あるいは観音開きの戸をつける』ものなど、変化に富んでいる。
 
*上の図は、上方の町家の例です。説明文にもある通り「江戸の表店は店の間口全体を土間としている」とありこの例とは違うかもしれませんが、多くの上方出店が多かった江戸の町家ではこうした例も参考になると思い取り上げました。(中澤)
 
2.学会総会での歴史員会の活動計画に再確認をしました。
①「江戸期の庶民の生活、町人のエクステリア」についての文献調査
②同上実地調査
 
3.6/19(水)の見学会について
 
4.次回定例会は7月8日(月)
以上